ヘリウム充填ハードディスク・ドライブと過去のHDDとの最大の違いとは?

ヘリウム充填HDD

過去のHDD(ハードディスク・ドライブ)は密閉されているように見えますが、密閉されていません。
空気により、ヘッドの上昇をおこなっているため、わずかに空気取り入れようの穴が開いています。
但し、穴だけが開いていると、微小なホコリや煙などが侵入し、故障の原因となるため、これらの外部の物質の侵入や気圧による変形を防ぐために穴がありフィルターが付いています。

2000年代初頭、ハードディスクは埃や煙草の煙の粒子が入ったら故障してしまうというような状態でしたが、現在のヘッドと記録面である円盤(プラッタ)の隙間はホコリも煙の粒子も入れないほど隙間しかありません。

では、穴を塞いでしまえば良いのかというと、今度は気圧の変化に対応できず故障します。

そのような理由から、山などの高度の高い場所や、地面などの地下に埋設するサーバー用には各メーカーが市販製ではない特別品を作って対応していました。一方、ヘリウム充填HDDは、そもそも密閉しているため、特別仕様品を作る必要性がなくなります。

さらに空気がない場所でも使えます。つまり宇宙空間や水中でも、広範囲にハードディスクを使えるようになったのです。

ヘリウム充填・扮入技術

化学式 He
分子量 4.00
外観 無色・無臭
物性 不燃性
比重 0.14(Air1.0)
沸点 -268.9℃

ヘリウム充填技術の肝は「ヘリウム充填」と「密閉技術」にあります。
ヘリウムは空気に比べて、分子量が約7分の1程度です。

通常、空気は窒素と酸素が4対1で混合している気体です。一方、ヘリウムは空気よりも分子量が低い分、ヘリウム中ではハードディスクの記録面である円盤の回転が安定します。

揺らぎの無い安定化が実現すると、気体との摩擦による発熱も少なくなります。発熱は膨張や変形など、円盤以外にもモーターやヘッド制御に影響を与え故障の原因となってきました。

ヘリウム充填技術により、発熱を抑え、安定化した内部構造を持つハードディスクは、これまで5枚程度の円盤しか搭載できず、容量の壁にぶつかっていたハードディスク技術を飛躍的に高めて、より多くの円盤を搭載が可能になりました。

結果、円盤の枚数が5枚から7枚になったことにより容量は40%以上増えます。HDD1台で10テラの大容量を扱えるようになったのも円盤枚数が増やすことができた恩恵です。

メーカー毎のヘリウム充填HDDの対応状況

プラッター円盤

東芝

東芝デバイス&ストレージはのコンシューマー向けHDD「N300 NAS Hard Drive」「X300 Performance Hard Drive」シリーズに12TBと14TBのデータが格納可能な大容量モデルを追加した。

それぞれヘリウム充填技術を採用したSATA 6Gb/s接続対応の3.5インチサイズの内蔵ハードディスクです。

ウェスタンデジタル

ウェスタンデジタルは、第4世代のヘリウム充填技術を採用し14TBの大容量を実現したエンタープライズ向けHDD「Ultrastar Hs14」の発表を行った。製品は特定のOEM顧客向けにサンプル出荷し、14TBの大容量を実現しているのが特徴。

平均故障間隔(MTBF)は業界最高レベルの250万時間。
メーカー製品保証は5年間。

HGST

「Ultrastar He10」最新のモデルでは円盤の枚数を従来の5枚から8枚に増設して12TBを実現

SEAGATE

エンタープライズ キャパシティ HDD(ヘリウム)シリーズ がある。
国内正規代理店5年保証
MTBF250万時間
550TB/年の高負荷稼働を想定

ヘリウム充填HDDの価格

一般的なHDDの価格は1TBあたりの価格が2,000円~5,000円程度です。
ヘリウム充填HDDの価格は1TBあたりの価格が6,000円~8,000円程度です。
SSD (ソリッドステートドライブ) は1TBあたりの価格が16,000円~18,000円程度です。

一般的なHDDの価格 2,000円~5,000円
ヘリウム充填HDDの価格 6,000円~8,000円
SSD (ソリッドステートドライブ) 16,000円~18,000円

 

尚、SSD (ソリッドステートドライブ) は起動ドライブとして使用することが目的なため、1TB当たりでの価格比較は意味がありませんが、ここではあえて容量あたりの価格差を比較し、分かりやすくしています。

ヘリウム充填HDDは、かつてSSD (ソリッドステートドライブ) がそうであったように、従来のHDDの価格と比較して個人ユーザーには若干、高額かもしれません。

そもそも大容量化が目的で製造販売されているので、主な顧客はデータセンターや法人向けになります。価格も数年前と比較して充分に購入可能な範囲に入ってきましたが、これまでのHDDと比較すると、どうしても割高に感じてしまうかもしれません。

そのため個人用途としては、ブルーレイディスクレコーダーなどで全番組録画対応などの家庭用レコーダー用途がメインになってくると思われます。

「安定稼働」と「価格」、「データ保管容量」のどれにウェイトを置くかで値段に対する安いか、高いかの実態価格は変化するでしょう。

ヘリウム充填HDDのメリット

水中での使用

  1. ヘリウム充填により静音性に優れている
  2. 消費電力低減
  3. 大容量データを1台のHDDで対応可能
  4. 気圧の高い場所や低い場所でも動作可能
  5. 空気のない場所でも使用可能

ヘリウム充填HDDの課題

  1. データ復旧技術の対応遅れ
  2. 基盤・ファームウェア不良によるエラーと発熱
  3. ヘリウム充填HDDの寿命

SSD (ソリッドステートドライブ) と同様に、ヘリウム充填ハードディスクは構造上の結果として、データ復旧技術が難しくなっています。

SSD (ソリッドステートドライブ) は、主に起動用ドライブとして使用されているので、被害の拡大は抑えられていますが、今後、大容量化に伴い、データセンターやサーバー、パソコンの内蔵ディスクとしてSSDが主流となれば、データ損失事故は増え続けるでしょう。

実際、現在販売されているパソコンの多くが起動ディスクとしての地位だけではなく、一般的なハードディスクのような扱われ方をしていますが、分散記録をすることで、特定の箇所でのエラーを防ぐ技術が、かえってデータ復旧を困難にしています。

ヘリウム充填HDDの課題は、SSDと同様に故障の際のデータ復旧技術の確立問題と高密度化、基盤・ファームウェアの高精度なコントロール問題が残っています。
また基盤・ファームウェアの高精度なコントロール問題は、ヘリウム充填HDDの寿命問題とも直結します。

ヘリウム充填HDDの寿命

気体であるヘリウムを充填し密閉したハードディスクが販売されてからメーカーや販売会社の保証期間が、これまでと比較して長期になっています。以前の一般的なハードディスクは通常1年、長くても3年程度が一般的でした。

またヘリウム充填HDDの寿命はMTBF(平均故障間隔)では、280年程度と表記されています。
MTBF(平均故障間隔)換算値は以前から当てにならないと評判ですが、それでも5年間の保証期間は「ヘリウム充填HDD寿命」を知るうえでひとつの目安になります。

ヘリウム充填HDDとSSDの寿命比較では、ヘリウム充填HDDは5年という長期保証とSSDの寿命が2年程度と言われていますから、寿命では2倍~2.5倍ほどヘリウム充填HDDの方が長寿命です。

「過去のHDD」、「ヘリウム充填HDD」、「SSD」はそれぞれにメリットとデメリットが存在します。
特に最新技術の「ヘリウム充填HDD」、「SSD」はメリットが大きいように感じるのですが、万が一、トラブルが発生した時に非常に厄介な代物です。

そのため、定期的なバックアップやRAIDのミラーリングは必要です。「ヘリウム充填HDD」に頼り過ぎず、「古い規格のHDD」を組み合わせることで、万が一、トラブルが発生した時にスムーズに対応できる環境構築が必要と思われます。

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